そこにいないという感覚
心拍数も下がっていて、有効な圧も出ていない。
これは生体モニターから得られること。
『もしかしたら、今夜かもね』
と先輩はいう。
でも、顔を見てわかることもある。
『この人、一応心臓は動いているけど生きていない』
『もう、ここに居ない』
という感覚。
多臓器不全。
たくさんの管に繋がれ、自発呼吸もない。
でも、患者さんは苦しくなさそう。
きっとその前はたくさん苦しかったと思う。
人工呼吸器も嫌だと思うし、全身の倦怠感も酷いはず。
心配そうに見つめる家族。
今にも消えかかる灯をじっと見つめている。
こんなとき、どんな看護が出来るか。
どんな言葉が家族にかけられるか。
ゆっくりと低下してきた全身状態。
覚悟はしていても、最期が近づいていることは素人だってわかる。
自分だったらどうされたい?